HRTの副作用
子宮出血
子宮のある方の場合エストロゲン単独投与は子宮出血が少なく、出しやすいのですが、子宮体癌の心配があるので、黄体ホルモン併用となります。
エストロゲン(プレマリン、エストラダーム)に黄体ホルモンを併用すればかなりの頻度(60%)で子宮出血が起こります。完全に閉経してなく、HRTの周期的投与をしている人はある程度出血の予測ができますが、完全閉経後のHRTの連続投与の方は予測のつかない人も多くいて、これがHRTのネックとなっています。教科書的には連続投与で6か月で子宮出血がなくなると書かれていますが、実際には1年あるいはそれ以上続く方もおります。対策は
1。出血しても心配ないと理解してもらう。
2。エストリオール製剤に変える。
3。プレマリンの量を半分にする。
4。プレマリン、プロベラを隔日投与にする。
5。周期的投与にして出血する日をある程度指定する。
子宮出血している時には一度子宮体癌の検査をした方がよい。2のエストリオールに変えるのは出血がなくなってから投与すれば効果がありますが、エストリオールでも子宮出血が10%ほどあり、特に70代以上の方に多いような印象を持っています。その他、薬効では骨粗鬆症にはエストリオールで効果がありますが、高脂血症には効果がかなり減じてしまいます。ホルモン量が低いので切れ味はいまいちです。3の方法は米国、日本では群馬大学で行われています。良い方法なのですが、日本で販売されているプレマリンの糖衣錠が固くくだくのが大変です。4の方法も良いのですが、エストロゲンの血中濃度を考えると骨粗鬆症、高脂血症、アルツハイマー病予防には効果が薄いと考えています。5の方法は黄体ホルモンを飲んでいる間の後半、あるいは飲み終わってまもなく出血が起こり、出血を予測できます。多くの方でその有効性は確かめられています。
乳房緊満
これは10%くらいにおこりますが6か月で2%に減り問題ありません。服用継続で必ず消失します。
消化器症状 めったにありません。むかつきがある人がいます。胃炎、潰瘍などには関係ありません。どうしてもある場合は服用時間を夕食後にとる。エストラダーム(貼付剤)にする。
太る心配 これはありません。
多くの方、医師の方も心配されます。血圧、浮腫等を心配され、電話をかけてくる人もいます。難しい話をすれば、女性ホルモンも性ステロイドホルモンであり、特に医師の方はステロイドの電解質貯留を心配されるのですが、HRTで使用されるホルモン剤はそんな力はありません。確かにピルでは太る効果があります。それは一般的な電解質貯留ではなく、ピルに含まれている黄体ホルモンのアンドロゲン作用のためです。HRTで使用されているMPA(プロベラ)はアンドロゲン作用が非常に弱いため、HRTに選ばれています。血圧に関してはHRTで血圧は下がることの方がずっと多いです。ごく希にエストロゲンで血圧が安定しない高血圧症の方がいますが、ACE阻害薬でコントロールがつきます。これもピルくらいの中高用量エストロゲン使用時の話で高用量のエストロゲンが肝臓のアンジオテンシノーゲンを産生しレニンアンジオテンシン系が賦活化されると報告されています。HRTのホルモン量ではまず、心配ありません。どうしても心配なら、肝臓で初回代謝されないエストラダームという方法もあります。
HRTを行うと体調がよくなり、食欲が亢進し、体重増加を招く可能性は十分考えられますのでそれには自己管理が必要です。
血栓症
確かにホルモン量の多い女性ホルモン剤ではおこります。とくに乳癌、体癌治療薬の黄体ホルモン(ヒスロン、プロベラ200mg)、あるいは高用量ピルでは有名です。しかし、HRTでは否定されています。HRTのプロベラは2.5mg。エストロゲンも少ない含量なのです。
肝機能障害 これもまずない
C型肝炎でインターフェロン使用中の人に投与した経験が2例あります。もちろん、内科医とタイアップしながら、使用しましたが。貼付剤は初回代謝に肝臓を通らないので特に肝臓を気にかけている方には有効な方法かもしれません。
胆石 これは少し頻度をあげる可能性がある
カンジダ膣炎 これも少し頻度を上げる可能性はありますが、ほとんど心配ありません。