椎体形成術PVP or BKP
写真は圧迫骨折で疼痛が強い人。椎体形成術中のレントゲン像から。
体型(身長・とくに体重)・遺伝がこの病気の60%以上の原因を占めます。
プロレスラーのような体型の方には少なく、ポパイのオリーブのような方に多いです。ただ、肥満者にも変形性関節症という難敵がおります。
2次的に骨粗鬆症を引き起こすことがよくあります。
そのうちで最も頻度が多いのがステロイド(副腎皮質ホルモン)性骨粗鬆症です。ステロイドはどの科でも投与される薬です。リウマチの消炎鎮痛剤としてあるいは喘息の吸入剤(これの可能性はかなり低いが起こりえる)、皮膚科でのアトピー、眼科、耳鼻科また婦人科の不妊症、麻酔科でのブロック注射など色々と使用されます。このステロイド剤の利点はもちろんありますが、重篤な欠点もあります。その最たるものが骨粗鬆症。かなりの頻度で起こりえます。たとえ骨密度が正常でもステロイド使用者の場合は同じ骨密度の健常者に比べ骨折し易いのです。でもご安心ください。このステロイド性骨粗鬆症もビスフォスホネートを併用するとかなりの確率で骨折を防ぐことができます。担当医によくお聞きください。もし担当医の骨粗鬆症に関しての認識が低ければその地区の専門家を探して相談してください。この他に甲状腺機能亢進症、透析など腎障害、リウマチなど膠原病はその病気単独でも骨粗鬆症に注意が必要です。
エストロゲン感受性のある乳癌の術後に約5年間使用されるアロマターゼ阻害剤(アリミディックス、フェマーラ、アロマシン)は骨密度低下作用が強く、特に骨密度の低い方は注意しなければなりません。この薬は閉経後にわずかに残っているエストロゲンを根こそぎ絶やして乳癌の再発を防ぐ目的で使われます。したがって乳癌には良い効果がありますが、そもそも骨粗鬆症の原因はエストロゲンの不足であり、そのわずかなエストロゲンを叩くのですから骨に良いわけがありません。是非、治療開始前に骨粗鬆症検査を受けましょう。骨量の悪い方の治療、予防はこの場合はビス剤です。
エビスタという薬は乳癌発生を未使用者と比べて3分の1に減少させます。(エストロゲンが乳癌発生を増加させるのと対照的に)。ビスフォスホネートと違い服薬の制限が無く、胃腸障害が出ない、またコレステロールが低下するという利点がありますが、欠点もあります。
1.hot flushなどの更年期症状を増悪させること。
2.ビスフォスホネートほどの力が無く、薬剤を中止すると骨への効果がすぐに減弱する。効果を維持させるには継続しなくてはならない。
3.東洋人では非常にまれですが、静脈血栓症の頻度を上げる。 エコノミー症候群が懸念されるので海外旅行時には内服中止する。血栓症の検査を行う。
ビス剤の副作用
1.胃腸障害 週一回の製剤になってからは滅多に起こらない。当院ではほぼ全例が週一回剤に移行している。
2.非定型骨幹部骨折 普通では折れない大腿骨幹が折れる。
破骨細胞の働きを抑え過ぎると、古い骨ばかりになる。骨質の低下が心配されるので骨代謝マーカーを定期的に調べる。尿中NTX
9.3以下あるいはBAP 9.6以下なら内服中止する。
3.顎骨壊死 ビス剤投与中に歯科で抜歯をすると顎の骨が壊死するという報告がある。 頻度は低いが、抜歯する時には歯医者さんに内服を告げ、抜歯前3か月は内服を中断してから抜歯を行う。
4.心房細動 これも頻度は低いが注射剤での報告がある。
当院での骨吸収抑制剤の使い分け
1.年齢 50・60才台にはエビスタ、70才以上にはビス剤を原則使用している。
2.重症度 椎体骨折が無いあるいは1個まで エビスタ。骨折が1個以上あるいは大腿骨骨折の心配があればビス剤。
3.使用期間 エビスタにはないが、ビス剤は原則3年間の使用にとどめている。3年経てもビス剤が中断できない重症例にはエビスタに変更して継続。
骨吸収抑制剤(ビス剤、エビスタなど)は骨吸収が亢進している(高代謝回転型
尿中NTX 54.3以上)方に使用する。低代謝回転型(尿中NTX 54.3以下、BAP 35.4以下)の方には(
骨形成促進剤。
フォルテオ(テリパラチド)
PTH製剤(テリパラチド)が発売されました。この薬は作用機序がこれまでの薬と大きく違います。骨形成促進剤であり、副甲状腺ホルモンを間歇的(1日1回)注射することで一端は骨吸収を高めるが、骨形成を強力に促進します。腰椎・大腿骨骨折抑制率、骨密度改善効果はビス剤の比ではなく大きく、また骨質改善効果もあります。ただ、現在ビス剤使用者やその効用(破骨細胞壊死、骨芽細胞減少)が残っている方には、その効果は望めません。
今後の重症者にはまず、PTH製剤を24か月使い、その後にビス剤あるいはデノスマブを使って増えた骨量を維持するという選択になると思われます。PTH剤で増えなかった大腿骨がここで初めて増えます。ただ薬価が高額であること。インスリンと同じような自己注射であります。
ビス剤あるいはデノスマブとPTH剤の間欠投与も有望かもしれません。
PTH製剤はそのPTHの機序から、作用する破骨細胞が元気でなくては効果は発揮できません。ビス剤は破骨細胞をアポトーシス(壊死)させることにより効果を生んでいる薬であり、ビス剤は一端、骨についたらその良い効果も悪い効果もなかなか失せないのが長所でもあり、短所なのです。したがってビス剤とPTH製剤の併用は禁忌ではないが、併用してもビス剤単独の効果しか出ないことになります。
PTH製剤の骨密度増加作用は測定部位で大いに異なります。
腰椎ではビス剤の2倍強の増加が望めますが、大腿骨ではビス剤程度。また、末梢の皮質骨(橈骨)ではかえって減少することが多いです。したがってPTHの効果判定は腰椎で行う必要があります。これはビス剤でも同じですが・・・・・わが国の骨密度測定機器は末梢骨測定が大半です。これが以前からの骨粗鬆症診療の大いなる問題点です。
たかが骨密度ですが、患者さんは効果(骨密度が増える)がなければ、治療を中断することが多いです。血圧の下がらない降圧剤のようなものです。そんなものは飲みませんよね。
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院長は日本骨粗鬆症学会認定医です
これは前腕の測定器
これはかかとでの測定法
これは手の指での測定法
各装置間で測定値の相違が多く、また治療効果の判定など詳しい精度を必要とする場合には末梢骨用は不向きです。
正式には
全身骨密度測定器HOLOGIC社(QDR4500W)主に腰椎と大腿骨測定を約30秒で正確に行います。
現時点で骨密度を一番正確に測定する機器です。この種の機器でのみ、治療薬の効果判定をすることが出来ます。
全身型にも各社ありますが、HOLOGIC社製が精度が高く、世界的に一番信頼されております。
現在はTRAP5b(120〜420が正常値)という血液検査で測定しています。
検査としてかなりの精度と信ぴょう性があり、どんどん溶けだしている方は危険です。使用薬剤を選択する1番の指標となると期待されています。
★常識的に中高年になれば新たに骨を作り出す(骨新生)ことには多くは期待できません。そこで、例えて言うならば漏れている蛇口を閉めるのが有効なのは当然で、これを欠いた治療では効果はほとんど望めません。
いずれにせよ!
★カルシウムとビタミンでは決して増えない。
従来からのダイドロネル使用群でも半年で最大6%増加しております。
このようなデータからも明らかに骨粗鬆症には女性ホルモン、ビスホスホネートあるいはエビスタ中心の治療が必須と考えられます。
★ただ上記2例は腰椎の骨密度測定ではこれほど骨密度が増えて治療効果が現れましたが、残念ながら前腕の測定器ではその効果が出ませんでした。ここが現在の骨粗鬆症診療における重大な問題点です。患者さんは治療効果がなければ治療を中断してしまうのは当然です(本当は骨密度が増えているにもかかわらず)。
わが国で普及している骨密度の機器は大学病院等大病院は全身用機器を使用していますが、残り多くの病・医院は末梢型(前腕、踵、中手骨)を使用し、それで診断しています。ところが機器間の乖離や上記のように末梢では治療効果が現れにくいのです。そこで時々全身用で測定することが必要です。
また骨代謝マーカー検査が測定可能ですが、測定は治療前と投与開始後の2回しか保険では認められておらず、長期の服用が必要な患者に服薬を継続させるには難しい環境にあります。
★★カルシトニン(注射薬)
この注射はよく使用されていましたが、H15.12月骨粗鬆症治療の適応がはずされ、骨粗鬆症による疼痛軽減目的に6か月間だけの適応となりました。骨粗しょう症による疼痛軽減には効果があります。しかし、残念ながら、骨密度増加・骨折予防効果が無いことが判明しました。
うちの小学生の娘に描かせた簡略化した模式図
(骨を浴槽にたとえて、患者さんへ骨粗しょう症治療の簡単な説明に使用している。家計簿や国の財政と同じ!!!)
穴の開いたタイヤに空気を入れる人はいない。まずは穴をふさぐ。
骨粗鬆症の治療も同じです。(ただし、穴が開いている方の場合です。漏れていないタイプの骨粗鬆症には次世代薬の登場を待つしかない)
運動療法
長期寝たきりで動かない状態が続くと筋肉・骨が減ることはよく、体験します。宇宙飛行士が長期に無重力で生きていると生還した後にかなりの骨量減少があることは証明されています。しかし、ただ闇雲に運動をすればよいというものではありません。女子マラソン選手が疲労骨折をよく起こすという事実があります。一流選手になるような方は体重減少で無月経になることがよくあります。つまりエストロゲン不足も骨折の重要な原因の1つです。
運動が骨には良さそうだと経験上は誰もが感じておりますが、運動療法が骨折抑制をするという確固たる証拠(エビデンス)はどこにもありません。つまり、通常の日常生活で暮らした群と、ある種の運動療法を行った群との比較。この両群での骨折の差の確固たる証拠を得ることは非常に難しいのです。例えば薬の効果判定のように調査が単純ではないことがその難しさに挙げられます。今、言えることは1日30分程度のウォーキングは骨の維持というより、筋力増強して転倒予防効果は確実にあると思えます。。
FRAX
WHOの骨折危険率判定ツールFRAXがネットでも気軽に利用できます。これは骨密度測定が不可能な低開発国向きに開発されました。骨密度を入力しなくても既往・家族歴などを入れると骨粗鬆症が判定でき、簡便です。
ただし、80歳以上の方はほぼ全員治療しなくてはならぬ領域に入ること。反対に60歳以下ではいかに重症でも問題なしと判定される危険性があります。つまり結果が年齢に大きく引っ張られ過ぎます。したがって65〜75歳の方に限り骨折危険判定に用いております。