第12 回 漢方ベッドサイド講義


症例1 : 26歳・女性(肩こり、腰痛)

 初診時、少陰→蹻脈→曲沢と考え、鍼と抑肝散加陳皮半夏、当帰芍薬散加附子を処方したが、鍼終了後、下痢をした。

   ● 脈診 : 少陰腎だし、支配色も黒です。
   ● 舌診 : 圧痕あり水毒あり
           四逆あり、手足の先が冷たく、しかも汗ばんでいるので、抑肝散加陳皮半夏の証のよう
   ● 腹診 : お腹も汗ばんでいる。抑肝散加陳皮半夏ならお腹はdryだけど。
           基本的には、処方は間違っていないけど、この汗ばんでいる感じから黄耆を入れるべきなのかな。
   ● 原穴 : 腎、帯脈
           帯脈だから、初回の鍼の後、下痢をした。帯脈は下がる、衝脈は上がるだから。

(下田先生)
  毎日、3~4リットル水分を摂取しているのが影響したのかな?。こんな症状が出る頃になにか恐ろしい思いをしましたか?

(患者さん)
  職場でいじめがあり、倒れた。でも、症状はその前からあった。この症状の出る前は元気だった。
  今は、体がだるい、出るのが億劫だ。

(下田先生)
  腎経の衰えに間違いないが、どうして腎が衰えたか?何でだろう?
  腎の人が生き生きしているとビロードのような黒、でもこの方はあまりきれいでない黒褐色です。
  この人の生命力を落とすような何かが加わった。
  (体鍼を終えて)肩こりはどうですか? 腰痛はどうですか? 指のしびれは?

(患者さん)
  腰痛は少しいいが、まだ、鉄板が2本入っている感じはある。肩こりは楽にならない。
  頸を回すと刺さるような痛みがある。腕を下げていると指がしびれて冷たい。

(下田先生)
  腎の病症は一番取れにくいけどね。(耳鍼を加える、肩、腰、交感)どうですか?

(患者さん)
  しびれがとれた。肩も軽いかんじがする。立ってたらボアーとしてたのが無くなった。だんだん温かくなってきた。

(下田先生)
  あなたの場合、人間の一番生きる中心のところが、なぜか落ちてしまった。毎日規則正しく同じ分量を運動した方が良い。
  水分を多く取ると尿もいっぱい出るので、微量元素が足りなくなってくる。
  どうしても水分を取りたいのなら、水分にわずがな天日塩を加えるといい。
  この海水から取った塩はいろんなミネラル分を含んでいる。腎が落ちた原因がどうしても分からない。
  このままいったら、いつか腎臓病をおこすかもしれない。

(患者さん)
  昔、いじめがあった頃、朝から晩10時くらいまでトイレも行かしてもらえなかった。これは関係していますか?

(下田先生)
  関係するかもしれない。しびれの部位も腎と関連する部位です。いま、あなたは腎が落ちながらも頑張っている。
  一生懸命頑張っているのが、頭痛を生み出している原因になっている。
  家に閉じこもっているわけにいかないので、なにくそと思って頑張っているのかな。
  自分のペースでこつこつといける方がいいのだけど。無理をしないこと、人と争わないこと、
  自分のペースでこつこつと体を動かすことが大事。水分だけの耐量摂取はやめること。
  処方は、抑肝散加陳皮半夏、当帰芍薬散加附子に肺と腎の関係を整えるために黄耆を入れる。
  老人でなく、若い人で腎の病症を病んでいる人は、難しい。老化による腎の病症は治しはしないけど、
  老化現象は年齢からくるnatural course だから意外と治療に反応してくれる。
  若い人の腎の病症の人はまったく反応しないことがある。よくあるのは突発性難聴です。
  なにやってもまったく反応しない。突発性難聴は、9割ぐらい肝の病症だけど、
  発症して2週間以内にきてくれたら肝の難聴はその場で良くなる。それ以上経ってきた場合でも、薬1ヵ月で変化がでてくる。
  腎からくる難聴や耳鳴りはまったく反応がない。


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