第11回 漢方ベッドサイド講義
症例1 : 38歳・女性(下腹部痛)
平成11年1月から、右下腹部痛あり。婦人科的には異常なし。
時々、この痛みがあり、ブスコパン静注で対応していた。右腹直筋の緊張があり芍薬甘草湯処方したが芳しくない。
(下田先生)
冷えますか?。
(患者さん)
はい、冷え性です。
(下田先生)
手は荒れない?。ちょっと荒れてるね。これは、指先まで気血がめぐっていないから、荒れてくる。お通じはどうですか?
(患者さん)
ありません。食べたらすぐ出る方です。生理の前は下痢になる傾向がある。すごい肩こり症で頭痛もします。
(下田先生)
耳鳴、めまいはないですか?
(患者さん)
ないです。
● 舌診 : 一見すると、加味逍遥散か香蘇散ですね。
● 脈診 : 主は腎です。腎陰が不足しているため肝陽が上がっている。
でも、肝の脈は押さえると消える。腎の脈は最後まで残る。
● 腹診 : 胃は冷えている。強いお血の圧痛点あり
(下田先生)
本来、加味逍遥散の方なんだけど、何らかの原因でお血が加わった。お腹だけの所見は桃紅四物湯です。
当帰芍薬散証なら、生理の時に下痢にならないし、あれだけ強いお血にならない。
また、駆お血剤として、桂枝茯苓丸も桃核承気湯も考えられない。
一番ピンとくるのは、加味逍遥散と四物湯に、下痢しやすいことから桃仁(末)を3g加えるといい。
それと、サフランを加える。これで、桃紅四物湯の処方ができるから。今は、生理だけど、間違いなく帯脈です。
生理が始まると同時に下る人は、その時に帯脈に入るから下る。帯脈は全部下るでしょ。衝脈は上がるし。
不眠の原因も、腎陰が下がり心火が上がるから熟睡できない。
(参加者)
この処方で少陰(腎)に効く処方ははいっていなような気がしますが?
(下田先生)
加味逍遥散も肝から腎に効く薬だし、四物湯も腎を意識している薬です。
但し、腎を直接補う薬はないので、からめ手から腎の負担を軽くするように考えたのが四物湯です。
腎は補うことが出来ないので、出来るだけ損なわないようにする(養生)のが精一杯です。
そうすると、年齢を重ねるごとに他とバランスがとれてくる。
(参加者)
腎を損なう最たるものは何でしょうか?
(下田先生)
やはり、塩辛いものかな。腎は塩を欲するけど取りすぎると悪い。
症例2 : 47歳・女性(冷え、体力なし)
平成7年6月に冷えと体力がない主訴で来院。
今年2月からは動悸がするとのことで、柴朴湯、コージン、十全大補湯を使っていますが、
要するに本人の現在の主訴は、「もっと体力をつけたい、あまり食べれない」ということです。
(下田先生)
食欲は?
(患者さん)
あんまり、ないです。夏に汗かいて水を飲んで新陳代謝の良いときは食欲があるんですけど、
冬に弱くて、生理周期でも高温期の時は良くて、低温期に悪くなる。
(下田先生)
寝汗は?
(患者さん)
ないです。
(下田先生)
今、外気が上がらないのだけど、こんな時は堪えますか?
(患者さん)
はい。堪えます。
(下田先生)
下痢する?
(患者さん)
特にない。
● 舌診 : 少し苔がある。
● 脈診 : 太陰脾経
● 腹診 : 振水音、力もない。本来は茯苓飲。心下痞がないので人参湯があわない。
この心下からグジュグジュと動く感じは茯苓飲です。
附子、コージンを加えた茯苓飲にすると温まってくるし、力もついてくる。
脾の人はストレスが加わると衝脈に入りやすいから、動悸などでてくる。
その時は茯苓飲合半夏厚朴湯に変える。胃腸を丈夫にするのに即効的なものはない。
じっくり内服していればかならずよくなる。附子は1gから3gまであげていく。
そうすると気の流れがよくなる。心下からグジュグジュと動く感じは茯苓飲で、
真武湯はお腹全体からとりとめなくグジュグジュと動く感じです。
外気浴と季節季節の物を食べることが大事です。